残業・長時間労働者への対応はできていますか?過重労働を放置しないための企業対応【記事】

長時間労働は、いまも企業にとって重要なリスクです
働き方改革関連法が施行されてから数年が経過しました。
一方で、現場ではまだまだ人手不足、業務の複雑化、急な欠員対応、管理職への負担集中などにより、残業や長時間労働が続いている職場も少なくありません。
長時間労働は、単に「忙しい状態」ではありません。
睡眠時間や休養時間を削り、脳・心臓疾患、メンタルヘルス不調、事故やミスの増加につながる可能性があります。
疲労がたまっていても、従業員本人は「大丈夫です」と言うことがあります。
しかし、残業対策は、福利厚生ではなく、企業のリスク管理そのものなのです。
企業が長時間労働を把握しながら放置していた場合、安全配慮義務の観点から問題になることがあります。本人の自己申告だけでなく、勤怠データ、業務量、睡眠・疲労の状態、周囲から見た変化を合わせて確認することが重要です。
月80時間超は、産業医面談を検討すべき重要なサインです
長時間労働者については、労働安全衛生法に基づき、一定の要件を満たす場合に医師による面接指導を行う必要があります。
特に、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる場合は、本人の申出により医師面接指導の対象となります。
ただし、実務上は「本人が申し出ていないから何もしない」とするべきではありません。長時間労働が続いている時点で、会社としては健康リスクを把握している状態です。そのため、人事・管理職は、対象者に面接指導制度を案内し、必要に応じて産業医や医師につなぐ体制を整えておく必要があります。(そしてその実施の記録を残すべきです)
また、月80時間未満であっても、本人の睡眠不足、メンタルヘルス不調、身体症状、深夜勤務、強い業務負荷が重なる場合には、早めの相談が望ましい場合があります。
長時間労働は、身体だけでなく精神面にも影響します
過重労働というと、脳卒中や心筋梗塞などの身体疾患を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、長時間労働はメンタルヘルスにも大きく影響します。
睡眠不足が続くと、集中力、判断力、感情のコントロールが低下しやすくなります。
また、業務量が多いだけでなく、
- 能力や経験に比べて難しすぎる業務
- 期限が厳しい業務
- 責任が重すぎる業務
- 連続勤務
- 深夜に及ぶ残業
- ハラスメント
- 退職強要
- 重大なトラブル対応
などが重なると、精神的負荷はさらに高くなります。
つまり、長時間労働対策では、単に「時間」だけを見るのでは不十分です。
何時間働いているかに加えて、どのような業務を、どのような心理的負担のもとで行っているかを見る必要があります。
残業を減らすには、個人の努力だけに頼らないこと
企業における残業削減というと、
「早く帰るように言っている」
「本人に効率化を促している」
「ノー残業デーを作っている」
という対応がよくあります。
もちろん、これらも意味はあります。
しかし、残業が減らない職場では、本人の努力だけでは解決できない構造的な問題があることが多いです。
たとえば、
- 業務量に対して人員が足りない
- 特定の人に仕事が集中している
- 管理職が部下の労働時間をリアルタイムで把握していない
- 会議や報告資料が多すぎる
- 優先順位が曖昧
- 断れない仕事が多い
- 業務の終了基準が決まっていない
- 「残っている人が頑張っている」という文化がある
このような状態では、従業員に「早く帰ってください」と言うだけでは改善しません。
残業削減には、仕事の配分、業務設計、評価制度、管理職の関わり方を見直す必要があるのです。
残業削減の具体策
企業で取り組みやすい対策として、次のようなものがあります。
1. 労働時間を月末ではなく月内で確認する
月末に集計して翌月に注意しても、すでに過重労働は発生しています。
大切なのは、月の途中で残業時間を確認し、早めに介入することです。たとえば、月の第2週・第3週の時点で残業時間を確認し、増加傾向にある従業員には、上司が業務量を調整する仕組みは有効です。
2. 残業が多い部署を可視化する
個人だけでなく、部署単位で残業時間を見ることも重要です。
部署平均の残業時間、深夜勤務、休日出勤、繁忙期の偏りを確認すると、組織上の課題が見えてきます。
「誰が長時間働いているか」だけでなく、「どの部署で長時間労働が起きやすいか」を見ることが必要です。
3. 業務の優先順位を明確にする
残業が多い職場では、すべての仕事が「重要」「急ぎ」になっていることがあります。
管理職は、業務を次のように整理する必要があります。
- 今すぐ必要な業務
- 今週中でよい業務
- 今月中でよい業務
- やめてもよい業務
- 他の人に移せる業務
- 外部化できる業務
残業削減では、「何をやるか」だけでなく、「何をやめるか」を決めることが重要です。
4. 勤務時間外の会議や連絡を減らす
勤務時間外の会議、夜間のチャット、休日のメール確認が常態化すると、実際の勤務時間以上に休息が妨げられます。
勤務間インターバルを意識し、終業後は仕事から離れられる時間を確保することが大切です。
特に管理職や専門職では、連絡が常時つながる状態が疲労を蓄積させることがあります。
5. 管理職の評価に残業管理を入れる
残業削減を現場任せにすると、忙しい部署ほど改善が進みません。
管理職の評価項目に、部署の残業時間、深夜勤務、休日出勤、業務改善の取り組みを入れることも検討できます。
残業削減は、個人の根性論ではなく、マネジメント課題として扱う必要があります。
産業医面談では何を確認するのか
長時間労働者への産業医面談では、主に、次のような点を確認します。
- 睡眠時間
- 疲労の蓄積
- 血圧、頭痛、動悸などの身体症状
- 気分の落ち込み、不安、イライラ
- 業務内容と責任の重さ
- 深夜勤務や休日勤務の有無
- 仕事以外の生活時間が確保できているか
- 医療機関受診の必要性
- 就業上の配慮の必要性
そのうえで、必要に応じて、残業制限、業務量調整、深夜勤務の制限、休養確保、受診勧奨などを会社へ意見します。
産業医面談は、本人を責めるためのものではありません。
従業員の健康を守り、企業として適切な安全配慮を行うための仕組みです。
あらたか産業医事務所にご相談ください
あらたか産業医事務所では、新潟市を拠点に、長時間労働者面談、過重労働対策、メンタルヘルス対応、休職・復職支援、健康診断後の事後措置などの産業保健支援を行っています。
産業医選任義務のある事業所だけでなく、50人未満の小規模事業所からのご相談にも対応しています。
残業が多い従業員への対応や、産業医面談の体制づくりでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
参考資料
- 厚生労働省「過労死等防止対策」
- 厚生労働省「令和6年度 過労死等の労災補償状況」
- 厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」
- 独立行政法人労働安全衛生総合研究所「長時間労働者の健康ガイド」